FPGA 入門
Posted 01/10/2020 by Bob O’Donnell
現代のビジネスにおける真実の1つは、産業が成熟するにつれて専門的になる傾向があることです。顧客の要望は通常、時間の経過とともに極めて複雑になり、それらの要求を満たすために製品の最適化が進みます。
それはテクノロジ業界全体、特に半導体ビジネスに当てはまります。今までになかったほど広範囲な、より複雑なハイテク製品が存在し、それを実現するために、ますます多様化する半導体ベースのコンピューティングソリューションのセットが採用されています。
過去数年にわたる半導体の進歩に関して特に興味深いのは、チップ数の爆発的増加だけでなく、基本のアーキテクチャにも爆発的な進歩が起こっていることです。市場の要求はいままでほとんどのテクノロジ製品の頭脳として採用されてきたベーシックな CPU やマイクロコントローラの機能をはるかに超えています。GPU、APU、TPU、及びその他のデバイスとしてあまり知られていない FPGA (フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ) と呼ばれるアクセラレータチップの役割が拡大しつつあります。
多くの実例で、これらのアクセラレータは CPU などのチップと連携して動作します。コンピュータ・ビジョンアプリケーションの画像認識など、アプリケーションにとって重要な特定の処理を高速に実行します。複数のチップアーキテクチャが連携して動作するというコンセプトは、一般的にヘテロジニアスコンピューティングと呼ばれ、ハイテク業界でここしばらくの間、最も重要でホットなトピックスの1つです。
ただし、ヘテロジニアスコンピューティングの新しさと比べて、それらのアクセラレータチップが持つ補完的なアーキテクチャの多くは以前から存在していました。例えば、最初の FPGA は 1980 年代半ばに設計され、それ以来、様々な種類のハイテク製品の主要部品として使用されてきました。もともとの FPGA のコンセプトは、ASIC (application specific integrated circuits = 特定用途向け集積回路) と呼ばれ、その名が示すように「特定の製品を対象とした専用シリコン」チップより柔軟な代替品を実現することでした。ASIC は特定の機能をとても迅速に実行するように設計されており、CPU などの汎用コンピューティングエンジンよりもさらに高速であるため、特定のアプリケーションでは優れた選択肢になります。残念なことに、ASIC は設計が非常に困難 (および高価) になる可能性があるため、現実的には常にベストな選択肢になるとは限りません。そして、決定的に重要なことは、ASIC が設計され製造されると、新たにチップを設計し製造しなければその機能を変更することができないことです。
一方、FPGA は本質的に柔軟なチップで、その名が示す通り 「フィールド」 でプログラムまたは再プログラムを行うことが可能です。それは、「デバイス内でチップを構成し機能させた後」、です。この「アップデートできること」は非常に有用な機能で、それにより FPGA を含むデバイスに新しい機能を追加 (または既存の機能の欠陥を修正) することができます。したがって、例えば、マシンラーニングを基としたアルゴリズムが「学習」をし、時間とともに進化するにつれて、そのアルゴリズムを実行するように最初にプログラムされた FPGA をアップデートして、そのアルゴリズムの新しいバージョンを実行できるようになります。当然のことながら、FPGA が提供するフレキシビリティは通常、同等の ASIC よりもわずかに高い価格になりますが、多くのアプリケーションに採用されているものは十分な価値があります。
実際に、「再プログラム可能」なことによって、企業が製品を組み立てる前にすべての機能設計を完了する必要がなく、製品の組み立ての後に機能をアップデートできるため、FPGA を採用した製品はより早く市場に投入できます。
FPGA の中には、チップの内部動作を制御するために使用することができるロジックブロックと高速内部接続が並べられています。概念的には、必要に応じて正確に再配置及び再構成できるレゴブロックの大きなセットと大差ありません。最新の FPGA を使ったデザインの利点は、処理を並列に実行できることです。特定のタイプの処理を大幅に高速化することができます。これは、FPGA とマイクロコントローラの重要な違いであり、マイクロコントローラの多くは順次処理しか実行できません。
専門化の大きなトレンドと同様に、FPGA 自体も様々な分野に分岐し始めており、いくつかの製品は高性能データセンターアプリケーションを対象とし、また別の製品は超低消費電力のアプリケーションを対象としています。どちらの場合でも、FPGA は現在の私たちの最新デバイスとサービスの不可欠な部分になっているカスタマイズ可能なコンピューティング能力を提供します。
Bob O’Donnell 氏は、テクノロジー業界と専門ファイナンシャルコミュニティに戦略的コンサルティングと市場調査サービスを提供する市場調査会社、 TECHnalysis Research, LLC の社長兼チーフアナリストです。Twitter にて @bobodtech で彼をフォローすることができます。