運転手のいらない未来に向けた技術
Posted 09/12/2017 by Jatinder (JP) Singh
私は最近、15歳になる娘を初めての大きいコンサートに連れていきました。ロジャーウォーターズのツアーです。自動車技術のブログで何故ロジャーウォーターズの話をしているのかと不思議に思ったかもしれません。もう少しだけ付き合ってください。私と娘はそのコンサートがとても気に入ったのですが、コンサート会場までの行き帰りの運転で、渋滞や駐車場の出し入れに苦戦したのです。そのハイストレスの状況下で私は、送り迎えをしてくれ、リラックスしてる間に渋滞を抜けてくれる無人走行車を持っていたらどんなにすばらしいかと想像しました。
自動車メーカーは、“運転手のいらない”車の夢を実現するため巨額の投資をしています。未来の乗り物は、電子化して接続され、自律して運転するようになります。私たちはこれまでに大きな進歩を成し遂げ、夢を実現する貴重な知識を得るための努力を続けてきました。完全な無人走行車を路上で走らせるために不可欠な技術の進歩のいくつかを紹介します。
計算ハードウェア
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コンピュータは私たちの手のひらに収まるくらいに縮小しました。計算能力はますます向上し、非常に複雑なOS、データ処理、機械学習の効率的な動作を可能にします。同じような傾向が車内のセンサ、アキュレータ、プロセッサでも見受けられます。センサは縮小し、スクリーン解像度と同様にデータ解像度も向上し、正確性も改良され、もちろん、低消費電力で行われます。大量生産のおかげで製造コストの削減を実現しました。例として、非常に大きい(そしてとても高価な)無人走行車上のLiDARセンサは、低コストでバンパーの中に隠れるほど小型化されました。
機械学習がますます多くのアプリケーションで使用されるようになった理由の1つとして、計算ハードウェアの改良が挙げられます。機械学習アルゴリズムの改良や微調整が行われるにつれ、それらの修正に適応するため柔軟で構成可能なハードウェアが必要になります。車載用のFPGAは理想的なソリューションです。
機械学習を組み合わせたマシンビジョンは、運転手のいらない車両の実現に向けて鍵となるハードウェア技術です。今や多くのラップトップやスマートフォンはユーザーログインの手段として顔やオブジェクト認識機能を備えています。この技術は無人走行車向けに歩行者、車線、木や信号などの物体の認識に役立ちます。レベル4やレベル5の自動運転が可能な車両は何百ものそのようなセンサが搭載され、そのためハードウェアはリアルタイムで情報を処理でき、機械学習を使って人間と似たようなとっさの判断ができるよう学習させる必要があります。
OSソフトウェア
完全な自律型自動車を実現するための主要なコンポーネントはソフトウェアです。車内OSのソフトウェアの技術によって車は構成可能になり、自律性が向上されます。ソフトウェアベースの機械学習アプリケーションは車のインテリジェント面を追加します。最新のオペレーティングシステム、特に自律型自動車の計り知れない複雑さは、セキュリティ、完全性、および安全性によってのみ適用します。事実、オペレーティングシステムのこれらの側面は車両が世間に受けいられるためには非常に重要です。
自動化のレベルが1から5に上がるにつれ、オペレーティングシステムの複雑さは増していきます。柔軟で、高度に構成可能で常にアップデートされ、インフラやアプリケーションにおける開発やアップデートを活用できる必要があります。安全性やセキュリティ機能は6ヶ月や1年ごとにアップデートされるソフトウェアでは機能しないため、頻繁なアップデートが求められます。私たちは車を取り巻く新しいエコシステムが誕生する入り口にいます。
自動車産業はこの規模の問題にはまだ対処していません。開発・検証され、安全で信用できるソフトウェアの展開に注力しなければいけません。このソフトウェアの特徴は、いくつかの最新オペレーティングシステムで使われているソフトウェアを超越すると考えられています。自動車メーカーは、自動車の電気化やハイブリットにおいてリーダー的な役割を担い、そのようなオペレーティングシステムの展開を向上させるでしょう。また、製造されるソフトウェアが高品質であり、自律走行車は信頼性があるという国民の信頼を得る必要があります。
自動車用のアプリケーションソフトウェアに必要なことは他に、直感的に使えなければいけないということがあります。データ収集や処理、センサーヒュージョン、集約、そして演出が必要です。オペレーティングシステムは全ての情報を入手、そして処理し、便利でシンプルなインターフェース内で平均的な運転手へ提示しなければいけません。最終的ゴールとしては豊富なヒューマン・マシーン・インターフェースであり、移動中に搭乗者がアクセス可能なストリーミングエンターテイメントを備えたものです。
ナビゲーションとマッピング
地図製作とは異なるデジタルマッピングは、物質界におけるデジタル表現です。スマートフォンに内蔵されている現行のマッピングソフトウェアは、環境情報やビッグデータと地図製作を混ぜ合わせたものです。現在のアルゴリズムは、私達を目的地に導くためには十分ですが、自動化レベル3の車両のみに有効です。完全自動の移動車両は、さらに解像度が高く1cmの正確性を要するでしょう(現在の1メートルの正確性とは違って)。
マッピングは静止した地図から、よりインタクラティブで頻繁にアップデートされるマップに進化する必要があり、新しい工事現場や木、交通量、道路標識、事故といった運転に影響を与える道路上での様々なオブジェクトを考慮するだけでなく、現在位置を正確に把握することが必要です。車線からの逸脱やGPS技術によって現在地を正確に判断し、出口へ出るための最適な車線や道路上の障害物を避けるために、効果的に車を動かさなかければいけません。
自律型自動車は毎秒ライブでのアップデートを必要とする可能性があり、いくつかの革新的なスタートアップ企業はユーザーのナビゲーション体験を向上させるための独自の方法をすでに考案しています。良い例がWazeアプリです。会社はクラウドソーシングを使い、様々なユーザーからライブデータを取得します。それによって、ユーザーにリアルタイムな情報を提供することが可能です。ただ、自律型自動車のニーズに応えるためにはより革新的な何かが必要です。
高帯域幅の通信
最後に、自律型自動車向けの通信とビッグデータについてです。ハードウェアやソフトウェア、そしてマッピングの進化によって、スマートカーが様々なセンサーからのデータを取得し、処理し、そして理解するようになります。こういった車の知能は自動運転をするためのデータを活用するためです。
生成された膨大な量のデータや、車両間または車両とインフラ間での通信はとてつもなく大きいものです。これらのスマートカーはお互い頻繁に意思疎通し合う必要があり、存在を知らせ、道路状況や危険に関する現在の情報をシェアします。こういった車両が何千台も道に走っている未来を想像してみてください。
未来の車はローカルエッジコンピューティングとクラウドコンピューティングを統合させます。つまり、データを収集し、処理し、蓄積し、そして意思疎通を行いながら起動するサーバーです。自動車メーカーとシリコンバレーの知識を融合させた新しい会社がどんどん誕生しており、そしてこれからも増えていくでしょう。モーターショーに行ってみてください。コンピュータープロセッサー製造業者が、今や自動車産業の主要企業であることに気づくでしょう。
まとめ
テクノロジーの進歩により、人類が夢見ていたスマートな自律型自動車が進化してきました。私達が前に進むことで、自律型自動車を可能にする技術が柔軟になり、反応が早くなり、そして構成可能となるはずです。複雑なアルゴリズムを学習するにつれて大きなデータを扱えるようになります。今週のフランクフルトで行われる国際モーターショーIAAでは、多くの運転手不在の車両を見ることができます。ただ、このテクノロジーが完成されて実際に道路で走行することができるようになるまでは、私を様々な場所(特にコンサート会場)へ運転してくれる車の夢を見続けるとします。